「人権擁護法案」の問題点
カテゴリー:その他の政策
2005年03月15日
今国会で、人権擁護法案の上程が計画されています。しかし、この法案には大きな問題があり、私たち有志議員は、その問題点をクリアしない限り国会に提出することは控えるべきであるとの考えです。この法案の基本理念である人権擁護が本当の弱者の人権擁護に活用されるのではく、この法案により悪用されかねない危険をはらんでいるのです。
「人権擁護法」の経緯について、若干触れさせていただきます。かつて、この法案が議論されたことがありました。しかしその際は、マスメディア規制の問題が中心で議論され、結果としてお蔵入りとなりました。今回も、同じようにマスメディア規制に関心が集中し、この法案の根幹である人権侵害の定義をはじめとする根本問題については、自民党内で議論されることはありませんでした。
しかし、3月10日の自民党法務部会合同部会にて、たった一日の議論で承認手続きをしようという動きがありました。私をはじめとする本法案に疑念をもつ議員が多数出席し、反対意見を述べた結果、承認は先送りされました。なぜ「人権擁護法案」が問題なのか? その主な理由は次の通りです。
・人権侵害についての定義が極めてあいまいかつ広義であり、人権擁護=人権侵害という摩訶不思議なもの。人権擁護のはずが、恣意的な解釈により逆に人権侵害を招く危険性がある。
・国家行政組織法上のいわゆる3条委員会として強力な権能を持つ人権委員会を設立し、その下に全国で2万人に及ぶ人権擁護委員が指名されるが、この人権擁護委員の国籍条項がない。人権に関連する公私の団体から市町村長が任命するが、議会の意見は聞くが拒否権はない、などその選考方法に大きな問題がある。
・現行の人権擁護委員は法律上政治活動は禁止されているが、今回の新人権擁護委員は積極的な政治活動のみ禁止。
具体的には、私が議連の事務局長として取り組んでいる北朝鮮による拉致問題についても、本法案が拉致被害者支援活動に対しても制限が加えられる危険があるのです。
幸いにして、去る11日の党役員連絡会にて、私をはじめ安倍幹事長代理などから本法案について慎重に取り扱うべきとの意見が出され、与謝野政調会長が「疑念の点が解決しない限り、法案の提出は控える」との見解が表明されました。
人権侵害に対する擁護は絶対になされなくてはいけないことは、申し上げるまでもありません。しかし、今回提出を目論む法案は、むしろ逆に前述のような重大な人権侵害を招きかねない要素を含んでいることが問題なのです。本当の弱者が人権侵害により泣き寝入りさせないためには、このような法案よりも、まずは司法制度改革を徹底的に進めることが不可欠なのです。すなわち、現行の人権擁護委員の権能の強化や、司法書士などを活用するADR(裁判代理制度)の充実をはかり、安価かつ速やかに法律上の保護・恩恵にあずかる制度が必要なのです。このことに対し、法務省が最大限の努力を怠っていることは否定できないと思います。
今後は、党の法務部会にて議論を深めて行く予定です。問題点を徹底的に追求して参ります。