尖閣諸島をめぐる問題で何よりも重要なことは、日本政府が尖閣諸島の領有権(歴史上、国際法上)の正当性について、国際社会および中国政府にたいし徹底的に主張し、それに伴う具体的行動をすること。
【尖閣諸島領有権について、歴史的・国際的な背景】
しかし、1972年の日中国交正常化以来、歴代の自民党政権のときにも日本政府の態度には、徹底的にこの主張を世界にしてこなかったのは残念ながら否定できない。
1978年の日中平和友好条約締結の際に、中国の鄧小平副首相が尖閣諸島の領有問題の「一時棚上げ」を唱えたが、尖閣諸島の領有権が日本にあることについて中国側とお互いに確認をとる作業を怠ってしまった。当事の福田赳夫首相も国会答弁でもその必要性に言及していない。
1992年に中国が「領海および接続水域法」を採択し、明らかに国際法に違反し尖閣諸島を勝手に自国領と明記した際に、外務省が口頭で抗議しただけで、政府としての徹底的な政治的・外交的抗議はなかったのが残念ながら現実だ。
今回の事件でも、民主党政権は「毅然たる態度で対処する」、「国内法、司法で対処する」というだけで、肝心の外交的主張と行動を怠っただけではなく、初期対応も致命的な失敗にはじまり、突如「処分保留のまま釈放」という中途半端な対応をしたことは、外交戦略上取り返しのつかない敗北といってもいい。
今後の展開に悪影響を与えることは明白だ。
日本政府は、歴史的事実、国際法に則り、尖閣諸島が日本の領有である正当性を、国際社会と中国政府に堂々と主張する外交努力を強めることをはもちろんのこと、「毅然たる態度」を具体的にするため、わが国領土防衛のために、
・自衛隊による海上警備活動が常にできるための法整備
・与那国島や石垣島、尖閣諸島などに早急に自衛隊駐屯の実現
・中国によるガス田〈白樺〉の試掘が確認された今、我が国も早急に試掘を始めるべき。
・また、尖閣諸島は現在個人の所有であり、国が賃貸契約を結んでいる。これにはリスクがある。土地収用法などに基づき買収国有化し施設建設を進める。
そして、軍事大国化する中国と米国の接近は、超大国にはさまれた日本というかつて歴史上経験したことのない危機的状況に陥ることである。だからこそ日米同盟の強化と信頼関係の回復が急務である。
にもかかわらず、普天間問題で日米関係を最悪にしてしまった。
今回の漁船衝突事件が起きたときには、民主党代表選挙の真最中だったことも重なってまともな対応ができなかった。まずは、速やかにビデオを公開してわが国の主張を世界に対して訴えることを怠ったことは致命的な失敗だ。
中国の目的は、短期的には東シナ海のガス田の権益確保であり、中期的には日本近海に点在するメタンハイドレードなどの海底資源の確保と、シーレーン確保である。改めて認識しなくてはならないのは、ガス田の規模はたいしたことなく、ガス田そのものが目的でないことは明らかで、すでに種々施設を充実し軍事基地化を進めている。
政権交代後は、今年4、5月の中国による日本領海での中国軍による違法行動に対し、強い抗議もせずますますその行動をエスカレートしている。西沙諸島、南沙諸島での実効支配、そして最終的には東シナ海、南シナ海を完全に中国の支配下に置くことだ。
このように、中国はしたたかな戦略をねりながら具体的な行動を始めたのであり、ジャブを出しただけでいきなりノックダウンするような日本政府の弱腰は完全に足元をみられてしまう。ましてや、ASEM会場にて立ち話で温首相と会談し、通訳もまともに準備していないことが明らかになり、これは屈辱以外の何者でもない。
2020年は中国共産党100周年にあたる。
これまでに、空母整備を完結して着々と彼らの「覇権計画」を実行していくだろう。
中国は、漁船船長釈放後、一見して強行態度を控えているように見えるが、これはあくまでも様子眺めであり、彼らの戦略に基づき次の一手をまちがいなく打ってくる。
「戦略的互恵関係」は、安倍政権の際に採用した言葉だ。
この前提は、政経分離原則がある。ましてや領土に係わる問題でこの戦略的互恵は当てはまらない。
にもかかわらず、現政権は基本政策も定まらないまま、言葉だけパクるのは、当面主義の菅政権を象徴している。参議院選挙の際の消費税発言しかり、経済対策しかりだ。
普天間基地問題も、口蹄疫問題も、円高対策も、今回の事件もいずれも現政権の危機管理能力の欠如を露呈したかっこうだ。「領土問題は存在しない」と声高に叫んでいるだけでは何も解決しないばかりか、中国の長期戦略の渦に巻き込まれてしまう。
まずは、今臨時国会で徹底的に政府の対応を厳しく追及するとともに、自民党ならではの対応をはっきりと主張していくことだ。