古屋圭司通信

IMG_3476.JPG 離婚後300日以内に生まれた子が前夫の子とみなされる問題で、自民党は10日、今国会への法案提出を見送る方針を固めた。自民党プロジェクトチーム(PT)が同日開いた法務部会との合同会議では、PTが示した民法改正を含む要綱案に異論が続出し、了承を見送った。公明党は「すでに与党PTで骨子は合意したはずだ」として要綱案に沿った法案作成を独自に進める構えだが、自民党が要綱案を了承する見込みは薄く、与党としての法案提出は困難になった。
 稲田朋美氏「生物学的な親子関係と法制度上の親子関係は異なる。法制度にDNA鑑定を持ち込むことは民法の大原則を崩しかねない」
 古屋圭司氏「国の基本法である民法を議員立法で改正するのは拙速だ。救済は裁判手続きの簡素化などで対応すべきだ」
 合同会議では、要綱案への反対意見が相次ぎ、賛成は後藤田正純衆院議員ら2人だけだった。出席した日本医師会幹部も「親子関係のDNA鑑定は慎重にすべきだというのが医療現場での風潮だ。裁判ではともかく役所の窓口でDNA鑑定を用いることは避けるべきだ」と要綱案に強い難色を示した。


 自民党は以前から、要綱案が示した女性の再婚禁止期間を定めた民法733条の改正には「議員立法で民法を変えるべきではない」との反対が多かった。ただ、離婚後300日以内に生まれた子を前夫の子とする民法772条については、無戸籍児が増えている現状を踏まえ、戸籍法の特例措置などで対応すべきだとの考えに傾きつつあった。
 ところが長勢甚遠法相が6日、記者会見で「民法の根幹と真っ向から違う仕組みの導入は非常に問題が大きい」と772条の特例措置を強く批判。代わりに法務省は、離婚後に妊娠したケースでは、医師の証明書を市町村の窓口に提出すれば戸籍届を受理するように求める通達を今月末に出す方針を決めた。
 この通達では、離婚前に妊娠したケースは適用対象としていない。しかし、家庭裁判所への調停申し立て手続き料は1200円。弁護士に依頼する必要はなく、1~4カ月で戸籍変更が認められるという。合同会議で、最高裁関係者がこうした手続きについて説明すると、出席議員からは「それならば大半の事例は救済できるではないか。何のために特例法を作るのか」との声がもれた。
 自民党政調幹部は「自民党PTのメンバーは公明党に引きずられすぎた。裁判の簡素化などは今後議論すればいいが、もはや要綱案で党内はまとまらない」と述べた。 これに対し、公明党の大口善徳衆院議員(法務部会長)は記者団に「家庭裁判所の手続きを戸籍窓口でできるようにするだけの話をなぜもめるのか。これは司法改革の一環だ」と強い不満を表明した。公明党は自民党の了承がなくても、今週末から法案作成作業を進めていく考えだが、党関係者は「家族制度見直しや民法改正に対する自民党のアレルギーを甘くみていた。トラの尾を踏んでしまった」と漏らした。

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