先週北京で日朝実務者協議が開催され、北朝鮮側が拉致問題の「再調査」と「よど号」犯引き渡しへの協力を行うことが明らかとなった。日本政府はこれを「一定の前進」と評価し、わが国は北朝鮮への制裁を一部解除する方針であると発表した。しかし、この程度の提案で制裁を一部解除するのは、あまりにも時期尚早である。
北朝鮮が従来の立場を変更して拉致問題での協議に臨んできたのは、近年のわが国と国際社会からの圧力が効果を上げたからに他ならない。
日本はこれまで、北朝鮮の調査に何度も煮え湯を飲まされ続けてきた。今回の「再調査」も結果を見てからでないと、とても信用できない。従って具体的な進展がはっきりと確認されるまで制裁を緩めることはできない。
さらに懸念されることは、わが国が制裁の一部解除を行うことが、米国におけるテロ支援国家指定解除の動きを加速させかねないということだ。
事態が動き始めた中、すべての被害者を帰国させるという拉致問題解決の本来の目標のために、政府関係者のより一層の覚悟と努力を心から求めたい。政府の発表を受け、我々拉致議連は6月16日午後、緊急役員会を開催して下記の声明を発表した。
対北朝鮮制裁緩和に関する声明
① 政府は具体的進展が確認できない限り、制裁の緩和は絶対に行わな
いこと。
② 政府はよど号犯人の帰国について、制裁緩和とは全く無関係である
旨、明確にすること。
③ 政府は具体的進展がない場合には、北朝鮮による従来からの引き延
ばし、若しくは騙しであるので、直ちにより強固な制裁を行うこと。
④ 政府は引き続き米国に対し、日米同盟に鑑み、拉致問題の具体的進
展が明確とならない限り、テロ支援国家指定解除を行わないよう強く
要請すること。
この声明を翌17日午後2時、拉致問題担当大臣である町村官房長官を官邸に訪ね、「家族会」「救う会」とともに要請を行った。これに対し町村官房長官は「再調査とは行動対行動のレベルである。拉致問題が解決するか、あるいは明らかな進展がない限り制裁解除は行わない。」との発言があった。