古屋圭司通信

衆議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会において質問に立ちました。
こちらから、11月26日の拉致問題特別委員会をご覧下さい
議事録は、以下の通りです。


○城島委員長 次に、古屋圭司君。
○古屋(圭)委員 自民党の古屋圭司でございます。
 拉致担当大臣に中井大臣が就任をされたということは、私も、中井大臣とは拉致議連で一緒に行動した同志でもございますので、エールを送りたいというふうに思います。
 ただ、新政権になりまして、鳩山総理、この新しい内閣が拉致問題についてどういう基本方針で臨んでいるのか、このことがはっきりしません。ある意味では非常に懸念もいたしております。
 例えば、安倍政権のときから、あるいは福田政権、そして麻生政権、この政権のときには、基本方針というのをはっきり決めて、これを表明しておりますよね。具体的には、すべての被害者の安全確保と即時の帰国、二つ目が真相の究明の実現、三つ目が拉致実行犯、被疑者と言っていますけれども、拉致実行犯の引き渡しの要求、この三点が基本方針でありますけれども、どういうわけか、政府の新しい方針を見ますと、最初の二つは出ておりますけれども、三つ目が見事に消えているんですね。これはもう外交の交渉カードとして、無条件でこういったものを消してしまうというのは、マイナスこそあれ、決してプラスはないというふうに思います。
 この点について、どういうふうにお考えで、なぜこの三点目を消してしまったのか、これをまずお伺いしたいと思います。
○中井国務大臣 おっしゃるように、基本的な方針として二つを掲げて対応をしようといたしております。しかし、内閣全体として実行犯追及または身元引き渡しを抜かしているわけではありません。
 現実に、私は国家公安委員会委員長として、警察庁に対して繰り返し、従来の事件の徹底的な再調査、また、特定失踪者の方々の証拠を集める、こういったことを強く要求いたしまして、警察庁長官も全国本部長会議等でこのことを言い、現実に各地区で再調査が始まっているわけでございます。
 今まで、実行犯が特定されたのもありますが、特に国内での協力者等、大半がどういうかげんか見逃されている、こういうことも事実でございます。これは、もう三十年たったということもあれば、いろいろな政治的要因も当時あったのかなと僕は拝察しています。ここらに対してももう一度徹底的に調査をすべきだ、こう考えています。
 したがって、抜かしたからといって、後退をしたとか外交のカードをなくしたということではありません。ただ、私どもはとにかく、生存者を無事帰国させる、真相を究明する、この二つに絞って、新しくできた拉致対策本部をフル稼働させていきたい、この思い一つでございます。
 私自身は、この削りました裏には、よど号実行犯の帰国ということが少し頭にあったということも間違いないことでございます。よど号の犯人たちが拉致実行犯として帰されるということで線引きされてはならない、このことも実は心配をいたしたというのが率直なところでございます。
 長年御一緒にやってきた古屋先生の御質問だからお答えを申し上げて、かえって踏み込み過ぎのお答えかもしれませんが、そういう判断でありました。
○古屋(圭)委員 ほかの委員会で、たしか法務委員会だったと思いますけれども、拉致実行犯の辛光洙のことについて法務大臣が全く承知していなかったですね。それで、ペーパーをもらって読んだら、だれを拉致したんでしょうと。原敕晁さんですよ。この原敕晁さんという字も読めないんですね。
 やはり、拉致実行犯の引き渡し、こういうものに対してこの政権は極めて弱腰ではないか、こういうふうに思うのは当然でございまして、これはしっかり、今の説明ではとても納得できる話ではありません。
 その上で、実は大臣、これは御存じですよね。これは内閣府のホームページにも載っておりますし、また総理官邸のホームページからも抜き出すことができます。これはまだ、パンフレットは使っておられますか、有効ですか。
○中井国務大臣 予算の見直しあるいはチェック、いろいろなことをやってここまで参りました。ようやく、十二月に北朝鮮の人権週間、これはやっていく、こういうところまでこぎつけてございます。
 現在、拉致を見捨てないというポスターを含めて何枚かのポスターは使っております。それから、余りにも膨大な経費を使ったはがきであったり、一体どうしてこんなにお金がかかるんだというようなところもございまして、これは、拉致対策本部といえども、税金の無駄遣い、対費用効果、こういったことを私どもはチェックして、一つ一つ、使うか使わないか、あるいはまた、そういう行事をやっていくかどうかというのを見直していきたい、こういう最中にございます。
○古屋(圭)委員 いや、今私がお伺いしたのは、このパンフレットはまだ実際に使われていますかどうかと。使われているということだと思います。なぜか。ホームページに載っているんですから。
 この裏をごらんになると、ここに、日本政府は北朝鮮に対して次のことを要求している、三点、基本方針なんですね。すべての被害者の安全確保と速やかな帰国、真相究明、拉致被疑者の引き渡し、三つ書いてあるんですよ。にもかかわらず、今の政府方針からこの三つ目が外れているということはおかしいわけでありまして、もしそうならば、このパンフレットを書き直すなりしないとおかしいじゃないですか。
○中井国務大臣 承りました。そのように対応します。
○古屋(圭)委員 ということは、これは、せっかくのカードを一つ減らしてしまうということなので、明らかに対外的なメッセージとしては弱腰という批判をされても、そのそしりは免れないと私は思います。もう時間がございませんので、これは私はそういうふうに考えております。
 それから、もう一点、これも歴代の三内閣で決めました、対応方針というのがありますね。これは、全被害者の安全と帰国要求、制裁実行と追加制裁の検討、厳格な法適用、情報収集と世論の啓蒙、特定失踪者を含む可能性ある事案の調査、国際連携。これをはっきり歴代政権で対応方針と記されておりましたけれども、残念ながら、新政権になりまして、対策本部のところでもこれは言明はありませんでしたし、ホームページからも見事にこれは外れています。
 今の武正副大臣等々の答弁を聞いておりましても、これは皆入っているじゃないですか。なぜこれを対応方針として入れないんですか。これも不思議ですね。
○中井国務大臣 経験豊かな古屋先生のおしかりですから、十分心にとめて対応をさせていただきますが、私どもは、対策本部を新たにつくって、私が拉致担当大臣として任命された、これほど強い意思表示はないと考えております。
 それから、過去五年間こういう方針でやってきたじゃないかとおっしゃるが、それじゃ、その方針のもとに、どういう成果でどういう実績が出たのか、私のところにまだ何一つ報告が、官僚機構も含めて、上がっておりません。
 そういった意味で、書くだけ書いて、後はまあまあお茶を濁しておけばいいということであるならば、私はそれも一つの政治手法かと思いますが、私どもは、とにかく実行して、何か突破口を開いて、解決に導いていく、こういう思いでこの問題に取り組むんだ。したがって、目標を立てて、こうでこうで、ああでああでと書くことが大事という御意見は十分承知をいたしますけれども、その中身を私どもは十分踏まえて実行していく、こういうことで御理解を賜りたいと思います。
 最後にお読み上げをいただいた、例えば国際協調ということにつきましても、私も就任以来、シンガポールへ飛んだり、韓国へ飛んだり、あさってはタイへ参ります。また、五カ国の大使にもお目にかかるなど、いろいろなことをいたしておりますし、総理みずからも、首脳会談等が行われるたびに大体拉致の問題を訴えている、こういうことを着実に実行している、この点もぜひ御理解をください。
○古屋(圭)委員 今の答弁を聞いておりますと、書くだけでは意味がないということですけれども、でも、実際、政府が取り組む基本方針なり対応方針というのは、当然ペーパーに書いて当たり前のことであります。それを厳格に実行していくということが何よりも大切なので、その大原則が抜けてしまっているというのは、どう考えてもおかしいと私は思いますよ。
 これは、今までのやり方が間違っていたということなら大胆に転換すればいいんですよ。しかし、そうではなくて、一定の成果は出てこないまでも、十分にそれは解決に向けての道筋に沿っているということならば、しっかりそれを書いていけばいいわけでありまして、ぜひ、それはひとつよろしくお願いしたいと思います。
 なぜこういうことを申し上げるかというと、鳩山総理が、所信表明の質問でも、対話と圧力という言葉が消えましたね。今大臣の方から、いや、私は対話という言葉は一回も使ったことがない、圧力なんだということなら、その圧力ということを堂々と記せばいい話でありまして、一方では、あらゆる方策を使ってという表現で総理は言っておられますけれども、あらゆる方策というのは融和策も実は入るわけですよ。
 融和策をとって、今まで、アメリカでもクリントン時代にKEDOの支援をして何の成果があったか、あるいは、日本も米の支援をしたことがある。何の成果もない。やはり、歴史的な教訓として、圧力をかけることによって小出しにはしてくる、しかし、なかなかそれが進んでいかないというのは我々は経験則からわかっていることでありますので、ぜひそういう対応をしていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
 余り時間がございませんので、次に進ませていただきたいと思います。
 拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はない、これも我々がずっと言い続けていることでありますし、歴代内閣、今、中井大臣の答弁でもそういうことがございました。それは一つ評価をさせていただきたいというふうに思います。それから、被害者全員が生存しているという前提に立って、被害者の即時帰国と納得いく説明を行うように求めるということについても、その趣旨の説明。
 そこで、ちょっと外務副大臣にお伺いしたいんですけれども、解決というのは、どういうことを解決というんですか。副大臣にお伺いしたいと思います。
○武正副大臣 先ほど来、拉致、核、ミサイル、この包括的な解決ということを……(古屋(圭)委員「拉致問題の解決」と呼ぶ)
 拉致問題の解決については、先ほど来お話がありますように、生存者の即時帰国、それから安否不明の拉致被害者に関する真相究明、この二点を本部としては掲げておりますが、犯人の引き渡し、実行犯、当然これは求めないというわけではないということも、今大臣からも答弁がありました。この二点がまずは解決ということだと考えております。
○古屋(圭)委員 今副大臣からも答弁がありましたように、拉致被害者の安全確保と速やかな帰国、それから真相の究明、被疑者の引き渡し、これは三点セットなんですよ。ですから、やはり、こういう形でパンフレットから外れる、それからあと、実際、政府の表明でも外れてしまうということは、どう見てもおかしいというふうに私は思います。
 それから、もう一つ、ついでにお伺いしますけれども、これは、解決の前に進展ということがありますよね。よく、進展とはどういう定義かというのはいろいろな委員会でもやりました。この委員会でもやりました。では、おさらいの意味で、進展ということはどういうことでしょうか。
○武正副大臣 昨年八月、日朝でもその調査を行うということを含めて合意しているわけでありますので、今言った二点、本部とすれば二点であります。犯人の引き渡しというのは当然のことということで申し上げたわけでありますが、この進展ということについては、そうした調査を確実に実行して、その真相究明に向けて進めていくということと考えます。
○古屋(圭)委員 これは歴代内閣でも、総理大臣も答弁は実はしているんですけれども、拉致問題の進展というのは、被害者全員を帰国させるという日朝双方の共通認識ができて、かつ北朝鮮が具体的に行動をとることということで、これは何度も答弁しているんですよね。だから、これが進展なんです。解決の前段階にこれがあるわけです。
 それで、その進展があったとしても、もう一つ、前政権では、こういった進展がない限りエネルギー支援にも一切参画をしない、こういうふうに表明をしておりますけれども、これに変わりはないでしょうか、副大臣。副大臣にお答えください。
○中井国務大臣 前政権の言葉遣いが微妙に、デリケートに五年間変わってきたことを、私は逆に野党時代に心配をいたしておりました。途中からにわかに進展という言葉が使われて、調査委員会なるものの約束がされて、それをもとに万景峰号の再入港ということが許されるという話が流れて、これは流れただけですからわかりませんが、私は非常に憤慨したのを今思い出しております。
 私どもの内閣におきまして、いまだ進展という言葉は使っていないと考えておりますが、外務大臣が外務委員会でそういう言葉をお使いになっているかどうかは、副大臣からお聞きをいただけたらありがたいと考えています。
 私どもは、とにかく全員帰国を図っていく、これに向かって最大限行動する、これのみで頑張る決意でございます。
○古屋(圭)委員 ということは、やはりエネルギー支援にも一切加わらないという大原則は堅持をするということでよろしいですね。はい、ありがとうございました。
 先ほど、オバマ大統領と首脳会談があったときに、私も議事録でしか承知はしておりませんが、北朝鮮の問題全般についてオバマ大統領から言及があって、それに対して鳩山さんがお答えをした、しかし、拉致という具体的な言及はなかったというふうに聞いております。それから、大統領が十四日の日にサントリーホールで演説をしたときには、みずからこの拉致の問題についても、拉致された人々について被害者の日本人家族が完全な説明を受けない限り正常化はない。アメリカの大統領にここまで言われていながら、今ずっと私もこの国会で質問をしてきたとおり、鳩山政権の基本スタンスというのは極めて弱腰であるという印象は否めない。
 私、中井大臣が就任をして、極めて厳しい態度で臨もうと言っていることはよくわかります。しかし、政府全体の方針としてはいささか心もとないというか、極めて心配であるというのは、多くの人たちが、特に家族会、関係者も含めてそういう疑念を持っているということは否定はできないと私は思いますので、ぜひひとつ中井大臣、しっかり頑張っていただきたいというふうに思います。
○中井国務大臣 御激励ありがとうございます。
 オバマさんからお話が先に出たんだよという形で私は鳩山総理から直接聞いておりまして、彼は非常にその点感激をいたしておりました。このことは少し事実と違うんだろうと思っています。
 また、オバマ大統領がお越しになられて演説をなさいまして、私も興味深く聞かせていただきました。横田さんあるいは家族の会の会長さん等も招かれておりまして、大統領から直接話があったということで感激されておったのを承知いたしております。
 私ども内閣も、まだまだ古屋先生や野党の皆さんから見ればふなれ的に見えるかもしれませんが、役所を使わずに政治家が精いっぱい自分たちで動く、もちろん仕事は役所の人にしてもらうわけでありますが、政治主導でやるというところが頼りなく見えたりするのかもしれませんが、従来よりかスピード感を持って、責任感を持って、日本自身が主体的に動いて解決に向かって頑張りますので、また超党派で叱咤御激励をいただきますようお願いいたします。
○古屋(圭)委員 歴代の自民党の総理は、この拉致問題について首脳会議のときに必ず言及していたんです。どんな小さな国、どんな主要国でも必ず言及をしていたということがあります。ぜひ新総理におかれましてもこれは徹底していただきたいということを、外務大臣にも中井担当大臣にもしっかり要請したいと思います。
 それから一つ、これは中井大臣が非常に意欲を持って取り組んでおられる、金賢姫の日本への招聘。先日、NHKでも金賢姫の放映をしていましたね、多分、大臣もごらんになったというふうに思いますけれども。やはりいよいよ、ああいう形で金賢姫自身が関与していたということがテレビでもはっきり明らかになった以上は、ぜひ日本に招聘をして、当委員会でもしっかり生の声を金賢姫自身から聞くべきだというふうに思いますので、ぜひその辺については、中井大臣にもひとつ汗をかいていただきたいということを要請したい。
 その上で、もう一つ、どうも鳩山総理が融和策に走っているのではないか、今までの方針を大転換するのではないかという懸念は、例えば小沢幹事長が韓国での記者会見でも、拉致問題ばっかりにとらわれずに、進めるべきことは早く進めた方がいいのではないかという趣旨の記者会見をされたというふうに聞いております。実力者の小沢幹事長がそう言っているということは、本当に大きくそういうふうにシフトしているのではないかという懸念を受けるわけでありまして、ぜひひとつ中井担当大臣におかれましては、長年私は中井大臣とともにこの拉致議連でしっかり取り組んできましたので、しっかり心してかかっていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
 最後に、ちょっと時間がありませんので、拉致被害者の家族の支援法、これは既に来年で任期が切れます。五年間が切れます。しかし、副大臣等にもお話を伺いますと、まだなかなかそこまで準備ができていないということでありますので、我々は今、議員立法としてこれを延長するというようなことで提案させていただくという準備をしておりますけれども、ぜひ家族に対する支援については、引き続き継続するように強く要請をしておきたいというふうに思います。
 以上です。
○中井国務大臣 支援法案につきましては、今のままでいきますと、次の通常国会冒頭という感じで僕らは思い描いています。しかし、これは政府提案というよりも、前も超党派でございましたから、ぜひこの委員会でおまとめをいただいて、お願いをしたい。大塚副大臣も、被害者の皆さんの御意見等も聞いた中で、また御相談に上がると思いますので、よろしくお願いいたします。
 なお、たびたび、鳩山内閣は融和策だ、こう言われておりますが、融和策をとるも何も、何にもどことも接触しておりません。いろいろなことをマスコミは書きますが、一切ありません。ここのところは御理解をいただき、徹底的に僕のところを中心に対応するということで今諸活動をいたしておる、このことも御理解をいただきたいと思います。
 なお、過般、小沢さんの発言があったということが報じられました。私、同席をいたしておりまして、これは韓国民主党の代表がお越しになりまして、紹介者は私、中井洽でございます。小沢さん、極めて珍しく愛想がよろしゅうございまして、韓国民主党の方にリップサービスしたなと僕はびっくりしたところでございます。ニュアンスは必ずしもそうではなかったと僕は聞き取りましたし、何の心配もいたしておりません。
 小沢さん周辺に対していろいろな行動や報道がなされておるということも私ども十分承知していますが、私ども内閣の方針とそごを来さないように、私自身がきちっと連絡をとってまいります。御心配いただきまして、ありがとうございます。
○古屋(圭)委員 リップサービスでこういう発言が出るということ自身が極めて国益を損ねるということで問題だとは思いますけれども、今、中井大臣が最後の御答弁でございましたので、時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。

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